「特養って何年待ちなんですか?」「有料老人ホームとサ高住って、何が違うんですか?」
デイサービスの管理者をしていた6年間、入所を考え始めたご家族から、こうした相談を数えきれないほど受けてきました。みなさん口をそろえて言うのが、「種類が多すぎて、何が何だか分からない」です。
結論からお伝えします。
老人ホームは、介護保険施設3つと民間の施設3つ、2グループに分けて覚えれば混乱しません。
そして費用は、月額の内訳4つを知れば、パンフレットに書かれている費用が理解しやすくなります。
そしてもうひとつ、種類やお金の前に知っておいてほしいことがあります。
私が現場で見てきた中で、施設選びを間違えそうになるご家族には共通点がありました。
きれいな施設=いい施設だと思い込んでいることです。
私は介護福祉士として現場に15年以上立ち、いまは介護タクシーで施設見学や入所日の送迎も担っています。この記事では、老人ホームの種類と費用の仕組みに加えて、見学のチェックポイントまでお伝えします。
読み終えるころには、ご家族の状況に合う施設の種類を絞り込めて、見学で何を見ればいいかが分かるようになります。
老人ホームの種類は2グループ|介護保険施設3つと民間3つ
老人ホームの種類は、運営のベースで2つのグループに分かれます。

| グループ | 種類 | ざっくり言うと |
|---|---|---|
| 介護保険施設 | 特別養護老人ホーム(特養) | 常に介護が必要な方の生活の場 |
| 介護保険施設 | 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指すリハビリの場 |
| 介護保険施設 | 介護医療院 | 長期の療養と医療が必要な方の場 |
| 民間中心 | 有料老人ホーム | 介護付きと住宅型の2タイプ |
| 民間中心 | サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 見守り付きの賃貸住宅 |
| 民間中心 | グループホーム | 認知症の方の少人数共同生活 |
ポイントは、どのグループかで「入れる人の条件」と「お金の仕組み」が変わることです。
まず、それぞれの特徴を順番に見ていきましょう。
介護保険施設3つ|特養・老健・介護医療院
介護保険施設は、公的な性格が強く、費用を抑えやすいグループです。
共通の注意点として、要支援1・2の方は利用できません。
特別養護老人ホーム(特養)|常に介護が必要な方の生活の場
特養は、常に介護が必要な方の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活の支援や機能訓練を提供する施設です。終(つい)の住み家として暮らせる生活の場であることが、いちばんの特徴です。
入所には大きな条件があります。新たに入所できるのは原則、要介護3以上の方です。
要介護1・2の方は、やむを得ない理由がある場合以外は利用できません。
費用を抑えやすいぶん人気が高く、地域によっては入所待ちが発生します。待つ間の選択肢として、次の老健や民間施設を組み合わせるご家庭も多いです。
特養を待つあいだの具体的な過ごし方は、次の記事で詳しく解説しています。

介護老人保健施設(老健)|在宅復帰を目指すリハビリの場
老健は、在宅復帰を目指している方の入所を受け入れ、リハビリテーションや必要な医療、介護を提供する施設です。
「家に帰るための施設」なので、ずっと住み続ける場所ではないのが特養との大きな違いです。退院直後に体力を戻したい、というときの強い味方になります。
介護医療院|長期の療養と医療が必要な方の場
介護医療院は、長期にわたって療養が必要な方の入所を受け入れ、療養上の管理・看護・介護・機能訓練と、必要な医療を提供する施設です。
たんの吸引や経管栄養など、医療的なケアが日常的に必要な方の受け皿と覚えてください。
このように、介護保険施設の3つは役割がはっきり分かれています。
次は、選択肢の幅が広い民間グループを見ていきます。
民間の施設3つ|有料老人ホーム・サ高住・グループホーム
民間グループは施設数が多く、サービスも費用も施設ごとの差が大きいのが特徴です。
有料老人ホーム|介護付きと住宅型の2タイプ
有料老人ホームは、大きく2タイプに分かれます。
- 介護付き……都道府県等から特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設。施設のスタッフが食事や入浴などの介護を提供する
- 住宅型……施設は住まいと生活支援が中心。介護が必要になったら、外部の訪問介護などを別途契約して使う
同じ「有料老人ホーム」でも、介護の提供内容がまったく違います。
パンフレットではまず、どちらのタイプかを確認してください。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)|見守り付きの賃貸住宅
サ高住は、施設というよりバリアフリーの賃貸住宅に近い存在です。
都道府県等への登録制度があり、専用部分は原則25㎡以上と決められています。
さらに安否確認サービスと生活相談サービスが必須で、ケアの専門家が少なくとも日中は建物に常駐します。
自立度の高い方が「見守りのある住まい」として選ぶケースが多い住まいです。
介護が必要になれば、住宅型有料と同じように外部サービスを組み合わせて使います。
グループホーム|認知症の方の少人数共同生活
グループホームは、認知症の方を対象にした専門的なケアを提供する施設です。
少人数で家庭的な環境の中、食事や入浴の支援を受けながら共同生活を送ります。
利用できるのは、原則その市区町村に住む、要支援2以上の認知症の方です(要支援1の方は利用できません)。
種類の全体像がつかめたところで、いよいよ気になるお金の話です。
老人ホームの費用の仕組み|月額の内訳は4つ

施設の月額費用は、どの種類でも基本の内訳は同じ4つです。
- ①介護サービス費の自己負担……所得に応じて費用の1〜3割
- ②居住費……室料と光熱費相当
- ③食費……食材料費と調理費
- ④日常生活費……理美容代・おむつ代など
具体例をひとつ。
特養の施設サービス費は公的に決まっていて、要介護3・多床室なら1割負担で1日732円(ユニット型個室は815円)。1か月30日なら約2万2,000円です。
これに居住費・食費・日常生活費が乗り、月額の合計になります。(※国が定めた基準を1単位10円で円換算した目安です。単価は地域によって異なり、施設の体制による加算でも前後します)
さらに介護保険施設とショートステイには、所得の低い方の居住費・食費を軽くする「負担限度額」の仕組みがあります。
市区町村への申請が必要なので、費用が心配な方は確認してください。
一方、民間の施設は家賃・管理費・サービス費が施設ごとに自由に設定され、入居時に前払金がかかる施設もあります。だからこそ、次にお伝えする相場の落とし穴が生まれるのです。
なお、在宅介護と施設介護でお金がどれくらい違うかは、介護費用の平均データの記事で詳しく解説しています。

費用で失敗しない鉄則|全国平均より「自分の地域の相場」
現場で「施設選びを間違えそうだ」と感じたご家族には、もうひとつの共通点がありました。
相場を調べずに、施設を決めようとしていることです。
入所後に送迎の車内で聞く「思ったより高かった」という声も、たどっていくと原因は同じ。
入る前に、その地域の相場を知らなかったことから起きています。
大切なのは、全国平均の金額ではありません。
同じ「介護付き有料老人ホーム」でも、都市部と地方、駅前と郊外では月額がまったく違うからです。
あなたの地域の施設を並べて見比べることが、相場感をつかむ唯一の方法です。
検索サイトを使えば、お住まいの市区町村で施設の種類・月額・空き状況を一覧で見比べられます。
無料の入居相談ができるサービスもあるので、候補を3つほどピックアップして、費用の比較表を作るところから始めてみてください。
👇お住まいの地域の施設と費用を、無料で見比べられます👇
そして相場と同じくらい大切なのが、パンフレットには載っていない「見学で見るべきポイント」です。
見学のチェックポイント5つ|きれいな施設=いい施設とは限らない

建物がきれいであれば、「雰囲気がいい」と感じる方も多いのではないでしょうか。
ただ、建物のきれいさと、介護の質は別ものです。
私は今まで相談員や管理者として、たくさんの施設に出入りしてきました。現在も介護タクシーの送迎時に多くの施設にお伺いしています。
その中で、ご家族から伺った声も、私自身が「ここはいい施設だな」と感じた瞬間も、決まって職員の動きが見えたときでした。
私が感じたチェックポイントを5つ、お伝えします。
逆に、入居後に合わなかったと聞く理由は、「職員の対応が良くなかった」「ご本人が施設の雰囲気に合わなかった」ーーこの2点が特に多いです。
どちらも見学でしか確かめられません。できるだけご本人と一緒に見学することをおすすめします。
介護の現場から|私が家族の施設を選ぶなら

「もしあなたが選ぶなら、どこを見ますか?」——ご家族からよく聞かれる質問です。
私の答えは決まっています。1番は職員の対応、2番は料金です。
建物の豪華さは、暮らし始めれば景色になります。
ただ、職員の対応はご本人が毎日、何度も受け取り続けるものです。
そして料金は、介護が何年続いても払い続けられるかという、ご家族の生活そのものに関わります。
施設見学は、1日で数か所を回ろうとすると移動が大変です。
私自身、介護タクシーの仕事で見学や入所日の送迎をお手伝いすることがあります。
明石市の近郊なら、車いすのまま見学に回ることもできますので、移動で困ったら頼ってください。
見た目の第一印象より、職員と料金。この順番だけは、どうか忘れないでください。
まとめ|老人ホームの種類が分かれば、次は地域の相場と見学
最後に、この記事のポイントを整理します。
【老人ホームの種類】
【費用と選び方】
種類の整理ができたら、次の一歩は「お住まいの地域の施設を3つ、見比べてみること」です。
検索サイトで費用と空き状況を並べて、気になった施設に見学を申し込む。
ご本人と一緒に、施設や職員の雰囲気を見に行ってみてください。
施設選びは、家族の「申し訳なさ」がつきまとう決断でもあります。
ただ、いい施設との出会いは、ご本人にもご家族にも新しい安心を連れてきてくれます。
焦らず、順番どおりに進めていきましょう。
出典
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの?」
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group14.html
- 介護老人保健施設(老健) https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group15.html
- 介護医療院 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group26.html
- 特定施設入居者生活介護 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group17.html
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group18.html
- 同「サービス付き高齢者向け住宅について」 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish_sumai/
- 同「サービスにかかる利用料」(負担限度額) https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

