「市役所から福祉タクシー券が届いたけれど、これはどう使えばいいの?」
親御さんの介護が始まったばかりのご家族から、こうした声をよく聞きます。
私は介護福祉士として15年以上介護の現場に立ち、現在は兵庫県明石市で介護タクシーを運営しています。日々の業務で、福祉タクシー券を実際にお預かりしている立場です。
先に結論をお伝えします。
福祉タクシー券のルールは、券面にほぼすべて書かれています。
ただし、制度は市区町村ごとに別物です。
そして使う前に大事なことをひとつだけ。
自治体と契約していないタクシー会社では、福祉タクシー券を利用することができません。
利用するタクシー会社で券が使えるかを事前に電話で確認することをおすすめします。
この記事では、実際の券の写真をお見せしながら、もらい方・使い方・使えるタクシーの探し方を解説します。
福祉タクシー券とは|市区町村が運賃を助成する制度
福祉タクシー券とは、障害のある方や高齢の方の外出を支えるために、市区町村がタクシー運賃の一部を助成する制度です。多くの自治体で、1枚500円などの金額が印刷された券が交付されます。
ここで、最初に押さえておきたいポイントがあります。
「福祉タクシー券は、国が全国一律で行っている制度ではない」ということ。
国が定める「地域生活支援事業」の必須メニューにも、タクシー料金の助成は入っていません(厚生労働省)。
つまりそれぞれの市区町村が、独自の判断で行っている事業なのです。
よって、お住まいの地域によって名前も対象者も枚数も変わります。
ネットで見つけた他の市の情報が、そのまま自分の街に当てはまるとは限りません。
「福祉タクシー」と「福祉タクシー券」は別のもの
もうひとつ、混同されやすい言葉を整理しておきます。
- 福祉タクシー……車いすのまま乗れる車両などで運送を行う、タクシー事業の種類のこと(国土交通省の区分)
- 福祉タクシー券……タクシー運賃の一部を助成する、市区町村の制度のこと
前者は車の種類、後者はお金の制度。まったく別の話です。
なお、介護タクシーと福祉タクシーの違いについては別の記事で詳しく解説しています。
福祉タクシー券は自治体で名前が違う|まず呼び名を知る
「福祉タクシー券」で検索しても、自分の市のページが出てこない。
これはよくあることです。
同じような制度でも、自治体によって呼び名がまったく違うからです。
実際の例を見てみましょう。
- 福祉タクシー利用券……横浜市、明石市など。もっとも多い呼び方
- 福祉タクシー乗車券……船橋市。要介護度が基準になっている
- 福祉タクシー利用券の給付……東京都中央区。枚数ではなく「年48,000円」と金額で交付
- 在宅高齢者外出支援サービス事業……山梨県韮崎市。地区によって1枚600円・1,000円・1,500円と額が違う
- タクシー料金の助成……名古屋市
呼び名を知るコツは、お住まいの市の名前とあわせて「〇〇市 タクシー 助成」「〇〇市 タクシー 利用券」で検索してみることです。「福祉」を外したほうが見つかることもあります。
【重要】同じ市に複数の制度があることも
さらにややこしいのが、ひとつの市の中に似た制度がいくつもあるケースです。
私の地元・兵庫県明石市を例にすると、タクシー券は3種類あります。

- 福祉タクシー利用券……担当は障害福祉課。障害者手帳をお持ちの方(身体1・2級、療育A判定、精神1級)が対象で、500円券を年48枚
- 通院支援タクシー利用券……担当は高齢者総合支援室。65歳以上・要介護1以上の方が対象で、500円券を月4枚
- 寿タクシー利用券……担当は高齢者総合支援室。70歳以上の方が対象で、500円券を年4枚(年間2,000円分)
そして重要なのが、この3つは併用できないという点です。
「自分の親はどのタクシー券に該当するのか」
まずここを整理することが、最初の一歩になります。
福祉タクシー券は誰がもらえる?|対象者3パターン
対象者の決め方は、大きく3つのパターンに分かれます。
①障害者手帳を持っている方(もっとも多い)
身体障害者手帳の1〜2級を中心に、下肢・体幹・視覚・内部障害は3級まで対象を広げる自治体もあります。療育手帳はA判定相当、精神障害者保健福祉手帳は1級のみ、という設定が一般的です。
明石市の福祉タクシー利用券も、身体1・2級/療育第1種(A判定)/精神1級が対象です。
②要介護認定を受けている方
介護保険の要介護度を基準にする自治体もあります。
千葉県船橋市では要支援2〜要介護5の方が対象で、要介護3〜5の方は利用枚数に制限がありません。
明石市の通院支援タクシー利用券は、65歳以上・要介護1以上で「一般の公共交通機関を利用することが困難な方」が条件です。
③年齢や世帯の状況で決まる方
韮崎市のように「75歳以上のひとり暮らし高齢者」「世帯全員が80歳以上の非課税世帯」といった条件の自治体もあります。
窓口が分かれている点にも注意してください。
障害者手帳が基準なら障害福祉課、要介護度や年齢が基準なら高齢者福祉の担当課、というように担当が別なのが一般的です。
福祉タクシー券のもらい方|申請の4ステップ
申請の流れは、どの自治体もおおむね共通しています。
①担当課に電話で相談する
いきなり申請書を送るのではなく、まず電話をおすすめします。
明石市の通院支援タクシー利用券のページにも「申請の際には、確認事項がありますので、事前にご連絡をお願いします」と明記されています。
②申請書に記入する
窓口・郵送のほか、オンライン申請ができる自治体も増えています。
③必要書類を提出する
障害者手帳、介護保険証、本人確認書類など。ご家族が代理で申請する場合は委任状が必要なこともあります。
④券が交付される
郵送または窓口で受け取ります。手帳の交付時や転入時に、その場で受け取れる自治体もあります。
申請するなら年度初めがおすすめ
ここは、意外と知られていない大切なポイントです。
多くの自治体では、申請した月に応じて交付枚数が変わります。
明石市の通院支援タクシー利用券は「申請月の翌月分から」の交付ですし、中央区は4〜6月申請なら年48,000円のところ、1〜3月申請だと12,000円になります。
「対象になりそう」と思ったら、早めに動いたほうが得です。
なお、2年目以降は自動更新の自治体が多く、明石市も「一度申請された方は、翌年度以降は申請なしで毎年度同じ乗車券等が届きます」としています。
【実物写真】福祉タクシー券の見方5つのポイント
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
冒頭にもお伝えしましたが、福祉タクシー券のルールは、その券面に書かれています。
実際の券を見ながら確認していきましょう。

こちらが明石市の福祉タクシー利用券です。同じ市内でも、対象によって色が違う券が交付されます。

こちらは同じ明石市の通院支援タクシー利用券。
利用者氏名欄、「利用区間」の欄があるのが特徴です。先ほどの福祉タクシー利用券とは、見た目からして別物だとわかります。

そしてこちらは、明石市の隣にある加古川市の福祉タクシー利用券です。
同じ「福祉タクシー利用券」という名前でも、様式も期間も別であることが一目でわかります。
券面で確認したいのは、次の5点です。
①有効期限
明石市の券は「2026年4月1日〜2027年3月31日」と年度で区切られています。
一方、加古川市の券は令和8年7月1日から令和9年6月30日まで。
同じ兵庫県でも、期間の区切り方が違います。
②1回の乗車で使える枚数
明石市の券には「割引後の乗車料金が500円以上1,000円以下の場合は1枚、1,000円を超える場合も2枚までしか受領できません」と印刷されています。
券を何枚も出せば、そのぶん安くなるわけではないのでご注意を。
ここを勘違いされている方は多いです。
③使えるエリア
明石市の福祉タクシー利用券には「乗車地または降車地のいずれかが明石市内の場合に利用できます」と書かれています。
つまり、市外の病院への通院でも、出発地や目的地が市内なら使えます。
詳しくは市のホームページまたは券面に記載されていますので、必ず確認してください。
④助成額と上位区分
加古川市の券には「500円」に加えて「ストレッチャー等使用2,000円」という欄があります。
加古川市では令和8年7月から、ストレッチャーなどの使用料金が2,000円以上かかった場合に限り、通常の助成に加えて1回2,000円分が上乗せされる仕組みが始まりました。
このように、制度が途中で新しくなる自治体もあります。
お手元の券面と市のホームページで、最新の内容を必ず確認してください。
⑤使えるタクシー会社の指定
通院支援タクシー利用券には「指定のタクシー会社以外では、利用できません」とはっきり書かれています。
ここが次の見出しにつながる、いちばん大事な注意点です。
福祉タクシー券が使えるタクシーの探し方
券が使えるのは、市と契約している事業者だけです。
探し方は3つあります。
- 自治体のホームページで一覧を確認する……多くの自治体が事業者一覧を公開しています。
明石市も、使えるタクシー会社の一覧をPDFで公開しています。 - 担当課に電話で聞く……一覧が見つからないときは、交付元の窓口が確実です
- 予約の電話で直接確認する……いちばん早くて確実
上記の中でいちばんのおすすめは、3つ目の「予約の電話で直接確認する」方法です。
「◯◯市の福祉タクシー券は使えますか?」
予約の電話で、この質問をしてみてください。
自治体と契約していない事業者を呼んでしまうと、券が使えず全額自己負担になってしまいます。
現役ドライバーが見てきた「もったいない使い方」3つ
ここからは、実際に券をお預かりしている立場から見てきたことをお伝えします。
①有効期限を過ぎてから気づく
いちばん多いのがこれです。
「使う機会がないから」と引き出しにしまったまま、年度末を過ぎてしまう。券は期限を1日でも過ぎると使えません。さらに、繰り越しもできません。
②1乗車あたりの枚数制限を知らない
「たくさんあるから、まとめて使いたい」というお気持ちはよくわかります。
でも、多くの自治体では1回の乗車につき1〜2枚までと決まっています。長距離の乗車で券を何枚も出しても、上限を超えた分は利用できません。
ちなみに加古川市は1回の乗車につき最大3枚まで(1,500円分)と、明石市より多く使えます。
枚数の制限を設けていない自治体もあります。お手元の券面を一度確認してみてください。
③使えるかどうか確認せずに呼んでしまう
タクシーが到着してから「この券、使えますか?」と聞かれることがあります。
私の車は明石市・加古川市の券に対応していますが、すべてのタクシーが対応しているわけではありません。
予約の電話1本で防げることなので、ぜひ最初に確認してください。
介護タクシーで使うときの注意|対象は「運賃」だけ
介護タクシーを利用する場合、もうひとつ知っておいてほしいことがあります。
福祉タクシー券が使えるのは、タクシー運賃の部分だけです。

介護タクシーの料金は、大きく3つに分かれています。
- 運賃……移動距離や時間に応じた料金。←券が使えるのはここだけ
- 介助料……乗り降りや室内での介助にかかる料金
- 機材料……車いすやストレッチャーのレンタル料
つまり、券を2枚(1,000円分)使っても、介助料や機材料は別に必要です。
あくまで運賃の一部を軽くする制度だと考えておくと安心です。
介護タクシーの料金のしくみについては、別の記事で詳しく解説しています。
介護の現場から伝えたいこと
券をお預かりしていると、有効期限が近い券をまとめてお持ちになる方がいらっしゃいます。
「もったいないから、今のうちに使っておかないと」
そうおっしゃるのですが、1回の乗車で使える枚数は決まっています。
結局、何枚かは使えないまま期限を迎えてしまう。そんな場面を何度も見てきました。
この券は、外出をあきらめないための制度です。
病院に行くのが大変だから、家族に頼むのが申し訳ないから、と外出を我慢してしまう方は少なくありません。
券が手元にあるということは、自治体が外出を援助してくれているということでもあります。
期限が来る前に、少しずつ使ってください。
美容院でも、買い物でも、お墓参りでも構いません(用途が通院に限られる券もあるので、そこは券面の確認が必要です)
行きたい場所に行くために使ってこそ、この券は生きると私は思っています。
まとめ|福祉タクシー券は券面と電話1本で使える
最後に、この記事の要点を整理します。

【福祉タクシー券の基本】
- 市区町村が独自に行うタクシー運賃の助成制度(国の一律制度ではない)
- 自治体ごとに名前も対象も枚数も違う。同じ市に複数の制度があり、併用できないことも
- 対象は障害者手帳・要介護度・年齢や世帯の状況のいずれかで決まる
- 申請は担当課への電話から。年度初めに申請するほど交付枚数が多い
【使う前に確認したい5つ】
- 有効期限(過ぎたら使えず、繰り越しもできない)
- 1回の乗車で使える枚数(1〜3枚など自治体で違う)
- 使えるエリア(乗車地か降車地が市内、など)
- 助成額(ストレッチャー使用で増額される自治体も)
- 利用しようとしているタクシー会社で使えるか(予約の電話で必ず確認)
また、介護タクシーで使う場合は券が使えるのはタクシー運賃のみ。介助料と機材料は対象外です。
明石市・加古川市の券をお使いの方へ。
ひだまりサポートは両市の福祉タクシー券に対応しています。「券は使えますか?」のご確認だけでも、お気軽にお電話ください。
そして、お住まいの地域が別の方は、市の名前と「タクシー 助成」で検索してみてください。
名前は違っても、同じような制度がきっと見つかるはずです。
券を使い切ることが目的ではありません。行きたい場所に行くために、遠慮なく使ってください。
※この記事は2026年8月時点の各自治体の公開情報をもとにしています。制度の内容は年度ごとに変わることがありますので、最新の情報は必ずお住まいの市区町村にご確認ください。
出典
- 明石市「障害者優待乗車券等の交付」 https://www.city.akashi.lg.jp/fukushi/shougai_fu_ka/shiori/yutai-joshaken.html
- 明石市「高齢者通院支援サービス事業(通院支援タクシー利用券)」 https://www.city.akashi.lg.jp/fukushi/k_kaigo_shitsu/konenfukushi/zaitakukaigo/taxi.html
- 明石市「敬老優待乗車券(寿タクシー利用券)」 https://www.city.akashi.lg.jp/fukushi/k_kaigo_shitsu/kenko/koresha/jose/josesedo.html
- 横浜市「福祉タクシー利用券」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/fukushi/annai/gaishutsu/kotsu/riyoken.html
- 船橋市「福祉タクシー乗車券(要介護者等)」 https://www.city.funabashi.lg.jp/kenkou/koureisha/002/p001792.html
- 東京都中央区「福祉タクシー利用券の給付」 https://www.city.chuo.lg.jp/a0023/kenkouiryou/shougaishafukushi/shienservice/seikatuken/takusir.html
- 加古川市「加古川市福祉タクシー助成制度について」 https://www.city.kakogawa.lg.jp/soshikikarasagasu/fukushibu/shogaishashienka/kotsuzeikinkokyoryokinnado/1413457817264.html
- 韮崎市「在宅高齢者外出支援サービス事業」 https://www.city.nirasaki.lg.jp/soshikiichiran/chojukaigoka/choujushakaitantou/2/6937.html
- 厚生労働省「地域生活支援事業の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/chiiki/gaiyo.html
- 国土交通省「福祉タクシー」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk3_000007.html
- 名古屋市「タクシー料金の助成」https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/shougaisha/1016573/1016575.html

