「親の介護って、いったいいくらかかるんだろう」
そう不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えします。
最新の調査によると、月々の介護費用は平均9.0万円。
住宅の改修や介護ベッドの購入といった一時的な費用が平均47.2万円。
介護をした期間は、およそ55か月(4年7か月)です。
合計すると、総額でおよそ540万円になります。
ただ、この記事でいちばんお伝えしたいのは、その540万円という数字ではありません。
「この平均を、そのままご自身の家に当てはめないでください」ということです。
私は介護福祉士として15年以上、介護の現場で働いてきました。
現在は介護タクシーの事業者として、ご利用者とご家族のお宅に毎日うかがっています。
その立場から見ると、平均540万円という数字は、実態を映しているようで、実は映していません。
同じ「介護」でも、在宅を続けるのか施設に入るのかで、金額が2倍以上変わるからです。
この記事では、最新のデータで平均額の中身を分解したうえで、ご自身の家の場合はいくらになるのかを見積もる手順までお伝えします。
介護費用の平均は月9.0万円|最新調査でわかる3つの数字
介護費用の全体像は、次の3つの数字でつかめます。
生命保険文化センターが2024年度におこなった「生命保険に関する全国実態調査」の結果です。
| 項目 | 平均 |
|---|---|
| 月々かかる費用(月額) | 9.0万円 |
| 一時的にかかる費用 | 47.2万円 |
| 介護をした期間 | 55.0か月(4年7か月) |

一時的な費用というのは、住宅の改造や介護用ベッドの購入など、最初にまとまって出ていくお金のことです。
この3つを組み合わせると、介護にかかる総額が見えてきます。
9.0万円 × 55.0か月 + 47.2万円 = 約542万円
細かい端数はありますが、およそ540万円と覚えておいてください。
これが「介護には500万円以上かかる」と言われる根拠です。
さらに知っておいてほしいのが、介護を4年を超えて介護した人が約4割いるという事実です。
平均は55か月(4年7か月)ですが、それより長くなるご家庭も珍しくありません。
介護費用の数字は3年ごとに変わります|前回2021年度との比較
介護費用の調査は3年ごとにおこなわれていて、数字はそのたびに動きます。
前回の2021年度調査と並べると、こうなります。
| 項目 | 2021年度 | 2024年度(最新) |
|---|---|---|
| 月々の費用 | 8.3万円 | 9.0万円 |
| 一時的な費用 | 74万円 | 47.2万円 |
| 介護期間 | 61.1か月 | 55.0か月 |
ここから読み取れるのは、一時的な費用と介護期間は下がった一方で、月々の負担は増えているということです。
住宅改修や用具にかかる最初の出費は抑えられるようになってきた。
けれども、毎月出ていくお金は重くなっている。
介護費用を考えるときは、この動きを頭に入れておいてください。
なお、介護費用の数字を目にしたときは、それがいつの調査のものかもあわせて確かめることをおすすめします。3年でこれだけ動く分野です。
在宅と施設で介護費用は約2.6倍違う|月5.3万円と13.8万円
平均9.0万円という数字には、大きなからくりがあります。
在宅で介護した人と、施設に入った人の費用が、混ぜて計算されているという点です。
同じ調査を、介護した場所で分けるとこうなります。
| 介護した場所 | 月々の費用 |
|---|---|
| 在宅 | 5.3万円 |
| 施設 | 13.8万円 |

その差は月8.5万円。約2.6倍です。
これを平均の介護期間である55.0か月で計算し、一時費用47.2万円を足すと、総額はこう変わります。
- 在宅で介護した場合……約339万円
- 施設で介護した場合……約806万円
※この2つの総額は、月々の費用だけを在宅・施設で分け、期間(55.0か月)と一時費用(47.2万円)は全体の平均を当てはめて計算した目安です。
差はおよそ467万円。
同じ「介護費用の平均」という言葉の中に、これだけの開きが隠れています。
平均9.0万円を見て「うちも月9万円くらいか」と考えるのは、危険ということです。
在宅を続けるご家庭にとっては高すぎる見積もりですし、施設を検討しているご家庭にとっては安すぎる見積もりになります。
施設を検討する段階になったら、施設の種類ごとの費用を早めに調べておくと、資金の計画が立てやすくなります。
介護費用の平均が目安にならない3つの理由
介護費用の平均が目安にならない理由は、大きく3つあります。
①在宅か施設かで2倍以上変わるから
1つめは、すでにお伝えした在宅と施設の差です。
これは「どちらかを選ぶ」という単純な話ではありません。
在宅で数年過ごしたあと、施設に移るという経過をたどるご家庭が多いからです。
その場合、費用は途中から跳ね上がります。
②要介護度によって使えるサービスの量が違うから
2つめは、要介護度です。
介護保険では、要介護度ごとに1か月に使えるサービスの上限が決まっています。
要支援1と要介護5では、上限額に7倍以上の差があります。
要介護度が上がれば、使うサービスも自己負担も増えます。
親の身体状況が変われば費用は変わるということです。
③いつまで続くか誰にもわからないから
3つめが、いちばん難しいところです。
平均は55.0か月ですが、これはあくまで平均。
4年を超えた人が約4割という数字が示すとおり、10年近く続くご家庭もあります。
月々の金額が同じでも、期間が2倍になれば総額も2倍です。
介護費用でいちばん読めないのは、金額ではなく期間なのです。
介護費用を見積もる3つのステップ

では、自分の家の場合はいくらになるのか。ここからは、実際に見積もる手順をお伝えします。
紙とペンを用意して、3ステップで書き出してみてください。
ステップ1|介護保険サービスの自己負担を計算する
まず、介護保険で使うサービスの自己負担分を計算します。
介護保険には、要介護度ごとに1か月あたりの上限額が決められています。
区分支給限度基準額と呼ばれるものです。
| 要介護度 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 |
| 要支援2 | 105,310円 |
| 要介護1 | 167,650円 |
| 要介護2 | 197,050円 |
| 要介護3 | 270,480円 |
| 要介護4 | 309,380円 |
| 要介護5 | 362,170円 |
※表の金額は、1単位=10円で計算した目安です。
介護保険の上限は正確には「単位」で決められていて、お住まいの地域やサービスの種類によって1単位あたりの単価が変わります。
この金額の1割から3割が自己負担です。
たとえば要介護3の方が上限いっぱいまでサービスを使い、自己負担が1割の場合。
270,480円 × 1割 = 月27,048円が自己負担になります。
ここで大事な注意点がふたつあります。
ひとつは、上限を超えて使った分は全額が自己負担になること。
もうひとつは、自己負担の割合の決まり方です。
「合計所得金額が160万円以上なら2割」という説明をよく見かけますが、これは正確ではありません。
実際には所得と年金収入の両方を見て判定されます。
- 2割負担……合計所得金額160万円以上、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身で280万円以上(65歳以上の方が2人以上いる世帯では346万円以上)
- 3割負担……合計所得金額220万円以上、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身で340万円以上(65歳以上の方が2人以上いる世帯では463万円以上)
ご自身の負担割合は、市区町村から届く介護保険負担割合証に書かれています。
まずはそれを確認してください。
ステップ2|介護保険以外で出ていくお金を足す
見積もりでいちばん抜けやすいのが、このステップ2です。
介護保険が使えるのは、あくまで介護保険サービスの範囲だけ。
日々の暮らしのなかで出ていくお金は別で計算することになります。
よく出てくるのは、この4つです。
- 食事にかかるお金……配食サービスや宅配のお弁当。介護食は普通の食事より単価が上がります
- 紙おむつ・パッドなどの消耗品……毎月コンスタントに出ていきます
- 通院にかかる足代……タクシー代や介護タクシーの料金。通院が週に何度もある方は、ここが大きくなります
- 保険が使えない付き添いや家事の支援……介護保険では頼めない用事を頼むときの費用
私が介護タクシーの現場で実感しているのは、通院の足代を見込んでいないご家庭が多いことです。
月に何度も通院がある方だと、交通費だけで数千円から1万円を超えることも珍しくありません。
介護タクシーの料金に関しては、別の記事で詳しく解説しています。

ステップ3|最初にかかる一時費用を見込む
最後が、介護が始まるときにまとまって出ていくお金です。
平均で47.2万円でした。
代表的なのが、手すりの取り付けや段差の解消といった住宅の改修や介護用ベッドや車いすなどです。
ここは介護保険で軽くできる部分があります。
- 住宅改修……20万円までの工事について、原則ひとり1回まで(要介護度が3段階上がったときや転居時はリセット)介護保険から支給が受けられます
- 福祉用具の購入……入浴や排せつに使う用具などは、原則として同一年度で10万円までが支給の対象です
ベッドや車いすは購入ではなくレンタルで介護保険を使えるものもあります。
何を買って何を借りるかで、初期費用は大きく変わります。ケアマネジャーに相談してみてください。
介護費用の負担を軽くする公的な制度
「見積もった金額が思ったより大きい」と感じた方も多いのではないでしょうか。
実は、負担を軽くする制度がいくつかあります。
高額介護サービス費|自己負担に月々の上限がある
介護保険サービスの自己負担には、1か月あたりの上限が設けられています。
上限を超えた分は、申請すれば戻ってきます。
| 対象となる方 | 月々の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万円〜690万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 市町村民税を課税されている(上記以外) | 44,400円(世帯) |
| 世帯全員が市町村民税非課税 | 24,600円(世帯) |
| うち、年金収入等が80万円以下の方など | 24,600円(世帯)・15,000円(個人) |
| 生活保護を受給している方など | 15,000円 |
※「年金収入等が80万円以下」の行は、世帯全員が市町村民税非課税であることが前提の内訳です。
多くのご家庭が当てはまるのが、44,400円の区分です。
注意していただきたいのは、この制度の対象は介護保険サービスの自己負担分だけだということ。
ステップ2で挙げた配食やおむつ代、通院のための交通費などの介護保険外の費用は含まれません。
医療費控除
おむつ代や通院にかかった交通費は、条件を満たせば医療費控除の対象になります。
医師の証明書が必要になるものもあるため、領収書は捨てずに取っておいてください。
対象になる条件は細かく決められているので、確定申告の前に国税庁のページ(No.1122 医療費控除の対象となる医療費)で確認してみてください。
ひとつ注意点があります。
通院の交通費のうち、タクシー代は原則として対象外です。
対象になるのは、電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合とされています。
介護タクシーを使う方はこのケースに当たることが多いのですが、判断が分かれる部分でもあるので、領収書を残したうえで税務署や税理士に確認してください。
自治体独自の助成
もうひとつ見落とされがちなのが、お住まいの市区町村がおこなっている助成です。
紙おむつの支給、配食サービスの補助、そして通院に使えるタクシー券など、自治体ごとにさまざまな制度があります。
私の地元である明石市にも、タクシー料金の助成制度が複数あります。
券の種類によって使い方や枚数の上限が違います。
以下の記事で解説しています。

これらの制度に共通しているのは、申請しないと使えないということです。
お住まいの自治体に確認することをおすすめします。
介護の現場から伝えたいこと

介護タクシーの仕事をしていると、介護のお金で悩んでいるご家族に、よく出会います。
理由ははっきりしています。
多くの高齢者が年金暮らしだからです。
決まった収入のなかから、介護保険の自己負担を払い、おむつを買い、食事を用意し、病院への足代を出す。ひとつひとつは大きな額でなくても、毎月確実に出ていきます。
年金の範囲でやりくりしようとすると、どこかを削るしかありません。
だからこそ、費用の全体像を早めにつかみ、予算を立てておくことに意味があると思っています。
お金の話は切り出しにくいものですが、状態が落ち着いているうちに、家族で一度話しておくと、あとがずっと楽になります。
まとめ|介護費用の平均と、わが家の見積もり
最後に、平均の数字と、ご自身の家で確かめることを分けて整理します。
【介護費用の平均(2024年度調査)】
- 月々の費用は平均9.0万円。ただし在宅は5.3万円・施設は13.8万円と約2.6倍の差がある
- 一時的な費用は平均47.2万円
- 介護期間は平均55.0か月、4年7か月。4年を超えた人が約4割
- 総額はおよそ540万円。在宅なら約339万円、施設なら約806万円が目安
【わが家の場合を見積もるために確かめること】
- 介護保険負担割合証で、自己負担が何割かを確認する
- 要介護度ごとの上限額に自己負担割合をかけて、月々の自己負担を出す
- 配食・おむつ・通院のための交通費など、介護保険外で出ていくお金を足す
- 住宅改修や福祉用具の一時費用を見込む
- 高額介護サービス費と、お住まいの自治体の助成を調べる
平均は、あくまで目安です。
大事なのは、その数字をご自身の家の事情に合わせて置き換えること。
この記事が、その最初の1歩になればうれしく思います。
なお、兵庫県明石市とその近郊で通院や外出の移動にお困りでしたら、私が運営する介護タクシー「ひだまりサポート」でもご相談を承っています。お気軽にお電話ください。
出典
- 命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」(2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査〈2人以上世帯〉より) https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html
- 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」(調査報告ページ) https://www.jili.or.jp/research/report/9849.html
- 生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」 https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム|サービスにかかる利用料」 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修」 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf
- 厚生労働省「給付と負担について(社会保障審議会介護保険部会 参考資料)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001119101.pdf
- 厚生労働省「介護保険制度における福祉用具、居宅介護支援について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000921892.pdf
- 国税庁 タックスアンサーNo.1122「医療費控除の対象となる医療費」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm
